2023/7/9 歩きながら食べるにふさわしいアイスを求めて(+おまけ)

 夜に家をめざして歩く5キロ程度のウォーキングを楽しみにしている。冬は寒くて寂しい気持ちになるが、春を迎える2月以降から本格的な冬の始まる1月くらいまでは、好みの音楽やNETFLIXのコメディさえ片手にあれば、歩きぬくことは難しくない。とはいえ、夕食を早めにとってしまうと、帰路の半分を過ぎたあたりで口さみしくなる。なので、徒歩30分を過ぎたあたりで各社コンビニエンスストアのアイスコーナーに冷やかしに行くのが、ここ数週間の楽しみだ。おなかがすいていれば奮発してソフトクリームなどをゆっくり味わいながら歩く。のどが渇いていればアイスキャンディーを水代わりにかじる。どちらでもないときは、某紙パック飲料をのむ(常温でおかれているのが気に食わないのであまりとらない選択肢)。

 ほかにもアイスの種類はある。カップに入って贅沢にも練乳をたっぷりしみっしみにしたかきごおりアイス、もなかアイス、口に含んで溶かすさわやかな風味のアイス。特別なコンビニなら甘酸っぱくて口ですぐになくなってしまう、はかないフローズンヨーグルトもある。最近ではがっつり柑橘系のフレーバーから、ピスタチオというパティスリーみたいな選択肢までもがどこでも手に入る。

 しかしここまで豊富な選択肢を用意してもらっているにもかかわらず、歩きながら食べるにはふさわしいアイスがない、という不満がある。もっと雑な、ただ安いジュースを凍らせたもので十分というわけでは決してない。だが、ウォーキング中の楽しみとして口に含むのにぴったりな選択肢は、結局のところガリガリ君ぐらいしかないのだ。今のアイスキャンディバーはおうち時間を楽しむという流行りを経て少しずつ変化を遂げたのか、それとももともとこうだったのか、口に含むにはちょっと情報量が多い。食べやすくて濃いフレーバーはたのしいが、歩いているときは自販機をのぞいたり、なぜか深夜に客でみっちみちのラーメン屋を見つめたりするので忙しく、フルに楽しめずに申し訳なく(もったいなく)感じるのだ。
 
 こんな貧乏性がたたってか、数分アイスの入ったケースを見つめていることがある。どの味も歩きながら消費するという雑な用途には向かない。かといって、いつも単調な味わいばかりがケースに並んでいても、商品として売り出す手間ばかりがかかって、商売としてのうまみがないような気がする。

【おまけ】
2023/9/30
 一週間くらいの雨続きの週を経て、今年の夏は夜中に冷たい風が吹くようになって秋が近づいてきた。アイスの棚には爽快感を押し出した氷菓子系よりもクリーム系のアイスが増え始め、秋のおいもアイスや梨アイス、カボチャ系のほっくりしたフレーバーが並び彩を得たが、上記の日記で抱いた不満は種類がふえた以外の理由でもうすっかりいなくなってしまった。そもそも、アイスを外で楽しめる時期というのはごく限られていることに気づいたからである。夏の夜はもう蒸し暑くて、散歩には向かない。アイスは手に持ってたった5分歩いただけで、でろでろに溶けてしまう。しかもそれがカップアイスなので、氷菓子みたいなタイプはお会計したらすぐ口に含んでしまうぐらいの意気込みで買うしかない。

 そこまでして不便なものを、わざわざごみ箱やお手拭きのない不便な場所で楽しもうとするのはおかしいという考えに、やっとここでたどり着いた。

 観光地にでもいない限り、一年間のなかでアイスを屋外でたべるタイミングなど、本来は存在しえないはずだ。アイスを外で食べるということ自体が特殊で不自然なのだから、そのためにはなにか外にいるための用事を人の手を介して作り出す段階が必要になる。ただの移動のためのツールに過ぎない目的地と目的地のはざまで、そもそも何かを楽しむために口に含むという行為を作りだすために、散歩という手間を自分の意思ではさみ、アイスをわざわざ「屋外で」買って食べるタイミングを作っていた。求めていたのはアイスではなくて、ミスマッチを作り出してあそぶ体験だったのだと思う。










p.s.来年も深夜散歩ができる温度になったら、またガリガリ君お米ソーダ味が販売されてほしい。